もにも~ど

シャフトに関係するものと関係しないものすべて

寄稿募集『シャフトの軌跡』(仮題)2021年

『シャフトの軌跡』(仮題)原稿募集

 

寄稿募集要項

◆発刊時期

2021年 C99(春コミ)予定。

→春コミの中止を受けて延期致します。

 刊行時期については現在調整をしておりますが、

 年内刊行に向けて制作を進行しています。

 (2021年3月追記)

 

◆内容

未発表のシャフト作品論。

シャフトにまつわる論考であれば何でも受け付けております!

 

◆募集原稿様式

①論評・批評

1600字程度から20000字程度。

②イラスト

挿絵・その他。

 

◆形式

.txt または .doc

 

◆第一稿締め切り

2021/08/08(暫定)

 

◆送り先・問い合わせ先

moni.mode45@gmail.com

もしくはあにもに (@animmony) | TwitterのDMまで。

何でもご相談していただければ!

 

『もにラジ』第4回「『マギアレコード 2nd SEASON -覚醒前夜-』最速感想会」

シャフト作品について毎回いろいろなオタクをお呼びしながら様々な角度から掘り下げている『もにラジ』ですが、第4回は『マギアレコード』を取り上げました。2021年7月新作アニメの『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-』1話の放映直後に、北出栞さん(@sr_ktd)とabさん(@abacus_ha)と一緒にオタク・雑談をしまして、前半では原作にあたるゲームに関する話、後半でアニメの2期1話について主に話しています。なお、2話の放送前に収録したものなので、2話以降の展開やOP・EDについての話は含まれていません。

アニメ2期のネタバレとなる要素は極力カットしていますが、原作ゲームのテーマに関わる話や、アニメ未登場の魔法少女の話などをしているので、気になる方は注意してください。

お便りとファンアートはあにもに(@animmony)のDMまで。どしどし募集中です!

 

◆参加者プロフィール

f:id:moni1:20210811211025p:plain 北出栞@sr_ktd

『マギアレコード』にこそいま一番読むべき物語が描かれている、と信じてやまないオタク。好きなキャラクターは美樹さやか、和泉十七夜、時女一族(箱推し)。

f:id:moni1:20210417111053j:plain  ab@abacus_ha

海外のオタク。また呼ばれました。
好きな路線は中央線。

f:id:moni1:20200721220522p:plain あにもに@animmony

シャフトアニメを経過観察中に観るオタク。グッド。
好きな帰り道は雨上がりの帰り道。

  • 【はじめに】 
  • 【ノベルゲームの構造】 
  • 【覚醒前夜の仕掛け】 
  • 【引用とコラージュ】 
  • 【黒羽根/神浜東西問題】 
  • 【今後の展望】 
  • 【おわりに】 

【はじめに】 

あにもに:本日はよろしくお願いします。ついに『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-』(2021年)1話が放送されまして、あまりの内容に思わず卒倒してしまったので、急遽ですが感想会をやろうと思い皆さまにお集まりいただきました。

ab:よろしくお願いします。

北出:よろしくお願いします。今回呼んでいただいてとても嬉しいのですが、僕はまったくシャフトオタクではなく、単に『マギレコ』のオタクということで、いきなり基本的なところからで恐縮なのですが……そもそもの前提として、新房昭之監督とシャフトの関係性がどういうものなのか知りたいです。

あにもに:今でこそシャフトのブランド戦略として「新房シャフト」とワンセットで製作側からもファン側からも語られることが多いですが、新房監督は厳密に言えばフリーの演出家です。新房監督がシャフトで監督をされるようになった初期の時代は、中村隆太郎監督がいたり、ガイナックスと共同で作品を制作していたりするのでやや事情は異なりますが、今ではほとんどイコールのようになっています。

ab:逆に言えば2010年代以降はほぼ新房監督中心の制作体制になりますね。

あにもに:ある時期から新房レジームが出来上がるわけです。もちろん、その下にはシリーズディレクターや副監督などがいて、現場の指揮を取っているポジションの役割の方もいます。そして、ここ最近はまた内情が変わってきており、佐伯昭志監督の『アサルトリリィ BOUQUET』(2020年)などはシャフトにとって新しいムーブメントでありながら、ある種の回帰的側面を持っていると言うことができるかと思います。

北出:なるほどです。『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)は、新房監督が「監督」としてクレジットされた最後の作品という認識で合っていますか?

ab:監督としてクレジットされたのは『続・終物語』(2018年)が一応最後にはなりますね。基本的には総監督が多いです。

北出:完全オリジナルの作品といった意味では『まどか』が最後になるといった感じでしょうか。

あにもに:そうなりますね。

ab:新房監督はシャフトの他作品と比べても『まどか』の画作りに深く関わっていました。絵コンテのチェック時に入れる修正などを見ても、『まどか』はかなり多かった印象がありますね。新房監督のフィルムと言っても良いと思います。

北出:ちなみに『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』でもクレジットは監督ですか?

ab:こちらは総監督で、監督は宮本幸裕になっています。宮本監督はもともとテレビ版ではシリーズディレクターを務めていました。

北出:宮本監督は『マギレコ』でもディレクターや監督などを担当されていて、統括に近いポジションですよね。

あにもに:劇団イヌカレーの泥犬総監督がいわゆるテレビアニメの専門家ではないので、宮本監督が共同でサポートをしているといった制作体制かと思います。新房監督はアニメーションスーパーバイザーという謎のクレジットになりました。アニメーションスーパーバイザーが何であるかは知りません!

北出:僕は基本的に物語的な水準でシリーズを追っているので、お二人にお聞きしたいんですが、新房監督の画作りが反映されているテレビ版と『叛逆』には、アニメーションの表現的な水準において差異があるのでしょうか?

ab:これはなかなかの難問が来ましたね(笑)。

あにもに:ひとつ事実として言えると思うのは、『叛逆』の画作りには劇団イヌカレー的な想像力が全面に押し出されていることです。先ほど『まどか』は新房監督のフィルムであると言いましたが、それに倣うならば『叛逆』は劇団イヌカレーのフィルムと形容しても間違いではないと思います。そういう意味では、『マギレコ』と表現論的な水準の上で接続可能なのは『まどか』ではなく、むしろ『叛逆』の方が強いと言えます。

北出:なるほど。僕はテレビ版は正直あまり響かなくて、それは物語的な部分に起因するものなのかなとも思っていたのですが、おそらく表現論的にも深層意識ではそうだったんじゃないかなと、今の話を聞いて思いました。というのも、『叛逆』の方はテレビ版とフォーカスしている部分が違う気がしているんです。

あにもに:フォーカスしている部分、ですか?

北出:これは印象論ですが、図と地(キャラクターと背景)といったものがあった際に、それぞれを別のレイヤーとして描いていないというか。『叛逆』は舞台そのものが「暁美ほむらの作り出した虚構世界の中」ということもあり、より劇団イヌカレー的なコラージュの側面が強くなっていると感じます。画的にも図と地がそれぞれ、どちらが図でどちらが地か分からない感じになっていたりしていて。

あにもに:劇団イヌカレーの役職としては、テレビ版では魔女空間の異空間設計がメインだったのに対して、『叛逆』では「コンセプチュアル・アートデザイン」というクレジットが追加されています。これだけだといまいち仕事の内容がイメージしづらいかもしれませんが、出来上がったシナリオをベースに様々なイメージボードを描き起こしていたりして、それを元にヴィジュアルを組み立てています。かつ『叛逆』はほぼ全編にわたって異空間が展開されていると言っても良いので、どこのシーンを切り取ってみても劇団イヌカレーの作家性が感じ取れるようになっているかと思います。

北出:新房監督の作風というのは自分にはちょっと分からないのですが、テレビ版に独特なあの少し突き放したクールな感じは、新房監督のキャラクターに対する距離感が如実に表れているんじゃないでしょうか。ストーリーとしてのハードさから、虚淵玄の作家性としてまとめられがちですが。

ab:アニメーションの表現の部分ではないのですが、『叛逆』の後半の展開やヴィジュアル的な部分は、同じく新房監督のオリジナルアニメであるコゼットの肖像』(2004年)を彷彿とさせる部分がかなり多かった印象でした。そこにピントを合わせれば『叛逆』における新房監督の作風が浮き彫りになるではないかと思います。

あにもに:ゲームの企画がどう始まったのかは詳しく知りませんが、そういう意味では『マギレコ』で新房監督が一線を引いたのは分かりやすい変化と言えます。

ab:個人的には『マギレコ』のゲームはアニメの新作が出来るまでの繋ぎという意味合いも強かったと思います。

あにもに:新作の企画が動き出してから『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天のタイトル発表まで大分時間がかかっていますからね。ただ、そういったある種の時間稼ぎ的な側面もあった『マギレコ』がここまで豊かな広がりを持つ作品になるとは正直思わなかったです。

北出:ゲームのリリース時を振り返ってみると、みかづき荘の面々といったオリジナルキャラクターたちもいましたが、どちらかというと『魔法少女おりこ☆マギカ』(2011年)や『魔法少女かずみ☆マギカ~The innocent malice~』(2011年)といった外伝作品のキャラクターが登場することを売りにしていたような気がします。『まんがタイムきらら☆マギカ』で連載していた作品のキャラクターたちが、見滝原組やみかづき荘の面々とアベンジャーズ的にクロスオーバーしていくような。なので、自分もここまで『マギレコ』独自の世界観が広がることになるとは思わなかったです。

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『美少年探偵団』「D坂の美少年」感想・D坂聖地巡礼

↑最終話を見終わった感想です。

『美少年探偵団』の10話~12話「D坂の美少年」が最高だったので、舞台となったD坂の聖地巡礼に行ってきました。D坂はサブタイトルにも付けられている通り、作中で起きる「轢き逃げ事件」のキーポイントとなっている場所です。

特筆すべき前提として、『美少年探偵団』は10話に至るまで屋内/屋外共にそれぞれ背景美術が統一的なテーマの元で仕上げられていたものが、「D坂の美少年」においてはその方向性ががらりと変化する点が挙げられます。ただし、単純に変化したと言ってしまうとやや語弊があるので、それまでの方法論をさらに深化させて強力に推し進めたと評した方が正確かもしれません。

「D坂の美少年」は、眉美と長広が美少年探偵団の創設者/元生徒会長の双頭院踊に会いに行って告げられる「子供の遊び」といった言葉が特に象徴的なように、どこか現実離れしていた美少年探偵団をめぐる一連のストーリーが、一気に現実と地続きの刹那的な思春期的瞬間を捉えるような話へと変わり、重ね合っていく様を描いています。この物語を描くにあたって背景美術が果たしている役割は大きく、ある種の違和感を与えつつも特殊な映像的処理も相まって、洗練されたストーリーテリングになっていたと思います。背景美術が物語の明確なコンセプトと共に昇華されている点に大谷肇監督の強烈な「美学」を個人的に感じ取ったので、「これは行くしかあるまい!」と思い立ち、舞台探訪をしてきました。以下はその個人的な備忘録です。

 D坂の舞台は田園調布の「どりこの坂」がモデルとなっています。知り合いのシャフトオタクに教えてもらいました。

多摩川園ラケットクラブの脇、田園調布一丁目26番と51番の間の坂道。坂名の由来は昭和の初めごろ、坂付近に「どりこの」という清涼飲料水を開発した医学博士が屋敷を構えたので、誰いうとなく「どりこの坂」と呼ぶようになったといわれています。それまでは、池山の坂と呼ばれていたそうです。

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「どりこの坂」という名称は「どりこの」という飲み物が由来だそうです。サブタイトルの元ネタとなっている江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』は千駄木の団子坂がモデルとなっているらしいですが、「D坂はこの辺りで一番人気が少ない」という原作の記述からすると、どりこの坂の方がD坂っぽさがあります。いわゆる静かな住宅地といった感じです。

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『もにラジ』第3回「『傷物語』と現代日本の傷痕」

シャフト座談会シリーズ『もにラジ』第3回の収録が5月某日行われました。今回はゲストにアーティストの水野さん(@potatovirusXXXX)をお招きして、これまでの『もにラジ』とはまた異なったアプローチで2016年に公開された映画『傷物語』の持つある種の奇妙さについて雑談しました。
お便りとファンアートはあにもに(@animmony)のDMまで。どしどし募集中です!

また、6/26(土)にアニメ批評同人誌『アニクリ』主催の「同人批評を読む会」配信にて、自分の書いた『傷物語』論が取り上げられました。私の論考に批判的検討が加えられているほか、本記事にも関連する追加論点が提示されていますので、併せてご確認頂ければと思います。アーカイブは以下の動画より視聴できるようです。

 

◆参加者プロフィール

f:id:moni1:20210626035406j:plain 水野 柚子桜大@potatovirusXXXX

美大に通ってるオタク。 まだ何も知らない。

f:id:moni1:20200721220522p:plain あにもに@animmony

シャフトアニメを今日もびりっと観るオタク。目が回る~。
ハートのプロミス、愛と言えるほど信じて…。

  • 【自己紹介】 
  • 【震災後として】 
  • 【戦後について】 
  • 【鬱と土地】 
  • 【亡霊の回帰】 
  • 【おわりに】 

【自己紹介】 

あにもに:本日はよろしくお願いします。今回の『もにラジ』では主に尾石達也監督の映画『傷物語』(2016年)についてお話を聞いていきたいと思います。まずは簡単に自己紹介をお願いしても良いでしょうか。

水野:水野幸司です。東京藝術大学の先端芸術表現科2年生です。よろしくお願いします。

あにもに:いきなり個人情報が全力開示されてびっくりしました。水野さんは生粋の尾石ファンとのことで……。

水野:そうですね(笑)。といっても、この場で「生粋の」尾石ファンを名乗るのはとても恐縮ですが...….。自分の所属している先端芸術表現科では受験するときにポートフォリオといって、自分の作品をまとめて大学に提出したのですが、僕は受験期の作品を『傷物語』にかなり寄せました。ポートフォリオで使用したカラーは『傷物語』の色彩をサンプリングしたり、レイアウト構成も尾石作品っぽく組み立てたりしました。あにもにさんとは大学入学前からツイッターのDM上などでいろいろとお話しましたよね。

あにもに:最初に知り合ったのは2年くらい前でしょうか。ポートフォリオの話を聞いて実際に見せてもらった際は心底驚いた記憶があります。現在大学生ということですが、『傷物語』は封切り当時に劇場で鑑賞された感じですか?

水野:実は全部リアルタイムで観に行っています。当時自分は中学3年生で高校受験直前だったのですが、「鉄血篇」は公開初日チケットが取れなくて挫折して、2日目に観に行きました。「熱血篇」と「冷血篇」は両方とも初日に観ました。

あにもに:中学生のときに観られたんですね。ということは『化物語』(2009年)はさすがにリアルタイムではないですよね。

水野:リアルタイムじゃないです。中学2年生の頃に初めて観ました。そこからひたすら〈物語〉シリーズを追っていった記憶があります。

あにもに:それでハマっていった感じですか。水野さんは一時期ツイキャスで毎週のように『傷物語』について語るラジオをやられていましたよね。文字通り毎週『傷物語』の話をしていて、ようやく違うテーマが来ると思ったら、今度は『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』(2013年)の話をしていて笑った思い出があります。

水野:やっていましたね(笑)。あれは楽しかったので、またやりたいです。

あにもに:水野さんはアーティストとして本名でツイッターで活動されているので、ネットで名前で検索すると学展の大賞を受賞されたときの美術手帖の記事などが出てきたりします。そのときのインタビュー記事ではご自身が影響を受けたサブカルチャーの話などをされています。

水野:まさに高校1年生のときですね。美術をちょっとずつ勉強し始めたときに、まだ理解も浅かったのもあって『傷物語』を観て、「こっちの方が面白いな」とか思っていました。当時「メディウム・スペシフィティ」とか、一方で「リレーショナルアート」とか、なにそれ、おいしいの?状態だったので、現代美術の作品を見てもいまいち興味が持てなくて、それよりもアニメの方が百倍面白いだろう、と。ただの厨二病です(笑)。

あにもに:傷物語』が美術に勝った!

水野:もちろん今はアニメ/美術といった単純な二項対立では捉えていませんし、またそこにある問題はそれこそゼロ年代から10年代に美術や批評の世界でかなりやられた議論だったと思います。ただ、学校やコンクールの中ではやはりそういう区別が依然としてありました。僕の出展した「学展」もそうでした。当時の僕は五十嵐大介、大友昇平、寺田克也劇団イヌカレーなどのクリエイターがマネやセザンヌよりもずっと輝いて見えていたので、それなら自分はアニメや漫画に寄せるか、といった感じで絵を描いていました。そういった部分は実は今でもあります。世界を変える為に必要なのは鉛筆一本と紙一枚あれば十分、みたいな。そういう時期に『傷物語』を観ました。僕にとって自分が見ていたアニメと文学がつながったのはそれがきっかけだったと思います。文学との出会いみたいな……。

あにもに:アニメではなく、文学との出会いですか?

水野:傷物語』はある側面では非常に文学的な構造を持っていると思ったんです。大学に入ってから文学や文芸批評を読むようになり、そこから今まで観てきた作品がどういう問題構造を持っていて、どのように応答してきたのかなども学んでいきました。

あにもに:なるほど、文芸的な問題意識に貫かれているということですか。今回はその辺りも含めて、『傷物語』をめぐるさまざまな問題についてあれこれお話をお伺いできればと思います。

 

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『もにラジ』第2回「『美少年探偵団』最速感想会」

シャフト作品を気の向くままに語る『もにラジ』第2回では、2021年4月新作アニメ『美少年探偵団』1話の放映後に、abさん、苔さん、そして合同評論誌『東映版Keyのキセキ』の企画・編集を務めたhighlandさんと一緒にオタク・雑談をしました。

放送直後の突発的な感想会だったので各々好き勝手に話していますが、シャフト作品を考える上でいくつか重要な論点が含まれていた気がしましたので、急遽書き起こしをしました。

お便りとファンアートはあにもに(@animmony)のDMまで。どしどし募集中です!

 

◆参加者プロフィール

f:id:moni1:20210417111038j:plain highland@highland_sh

シャフト作品を全作見れてないのでシャフトオタクを名乗れないオタク。
新房昭之の原体験は『THE GOD OF DEATH』(2005年)のOP。 

f:id:moni1:20210417111053j:plain ab@abacus_ha

最近アイデンティティがなくなりつつある感の否めない海外のオタク。
ふつつか者ですがよろしくお願いします。

 f:id:moni1:20200721220515j:plain @_johann_hedwig)※チャットでの参加

新房昭之コンテとコンテ回の模写を毎日続けているオタク。
職業:アニメーションスーパーウォッチャー

f:id:moni1:20200721220522p:plain あにもに@animmony

シャフトアニメを意外にも観るオタク。いちのや。
ちょっとだけ頭使って、後は根性ー! 

  • 【『美少年探偵団』について】 
  • 【演出ギミックについて】 
  • ティーカップCGIについて】
  • 【おわりに】

【『美少年探偵団』について】 

f:id:moni1:20210417111418p:plain

『美少年探偵団』1話「きみだけに光かがやく暗黒星 その1」

 

あにもに:皆さま本日はよろしくお願いします。『美少年探偵団』(2021年)が個人的にかなり良かったので、急遽ですが感想会をしようと思いお集まりいただきました。さっそくですが、1話は自分は限りなく絶賛といっても良いくらい面白く、積極的に肯定していきたいと思える作品でした。作品としてかなり洗練されていて、演出的な視点から考えても、シャフトが長年追い求めているスタイルのある種の理想形に近いのではないかと感じました。今後、実験的な演出要素も十分に期待出来ると思いますし、ここ5年くらいのシャフト作品の中ではトップレベルに良かったのではないでしょうか。highlandさんはどうでしたか? 

highland:自分も良いと思いました。ひとつだけあにもにさんの感想に付け加えることがあるとすれば、遊びの要素がやや少ないのかなという印象を持ちました。〈物語〉シリーズに顕著だったような、作劇に直接寄与しないギミックなどがあまり無かったというか。これは近年のシャフト作品に共通して指摘できることだと思うのですが。

あにもに:背景やオブジェクトなどがすべてひとつのスタイルとして全体の作風に還元しているように見えますね。いろいろな要素を有機的に組み立てていて、昔のシャフトアニメのようなカオス状態にはなっていないと言えます。abさんはどうでしょうか?

ab:1話は良いか悪いかで言えば、良かったかなと思います。僕は原作を読んでいないので、まだ話がどういう風に展開していくのか分からないところはあるのですが、何となくストーリーの導入としては『化物語』(2009年)の1話とかと似ているのではないかなという印象を受けました。ただ、『化物語』はビジュアル面で原作読者の斜め上を行く映像化だったのに対して、『美少年探偵団』は概ね原作読者のイメージに近しい形になっているのではないかと感じました。

highland:自分も原作は読んでいませんが、それは感じましたね。

あにもに:なるほど。苔さんはどう観ましたか?苔さんは『美少年探偵団』のメインスタッフが発表される以前から大谷肇監督の演出で観てみたいと言っていた程のファンですので、ぜひとも感想を伺いたいです。

苔:自分も原作は読んでいないのですが、他の西尾維新の小説を参照して考えると、情報量のペースメーキングが原作に忠実なのではという風に感じました。『化物語』などでは映像としてのテンポを再構築するための工夫が多く見られましたが、この1話は西尾維新原作を読む際のテンポそのものを原作再現のひとつとしているのではないかとも感じました。 あにもに:大谷さんは近年のシャフト作品の第一線で活躍してきた演出家ですが、本作がシャフトでの初監督作品ということになると思います。以前、別の記事でも取り上げたことがありますが、今回演出的な観点からはどうでしょう。

苔:シャフト作品で言うと、『かってに改蔵』(2011年)時代からの大谷監督の特徴、例えば日の丸構図の多用・手元の仕草をメインとした芝居・絵画・舞台的な光の表現を比較的重視するところなど以外は、堅実な演出の上に新房要素をブレンドした感じだなあという印象です。作中に登場するフォントがダサいですが、シャフト演出的にも余計なノイズはなくて、演出厨的にも幸腹な映像化でした。ただナメが弱いのは気になりました。

あにもに:たしかに、フォントに関してはそう言えるかもしれません。

highland:フォントと言えばシャフトではないですが、元シャフト関連のスタッフを中心に作られた八瀬祐樹監督の『炎炎ノ消防隊』(2019年)もダサかった……。

あにもに:炎炎ノ消防隊』のタイポグラフィはフォントもレイアウトもまったく駄目でしたね。非常にもったいなかったです。

highland:そういう意味では、かつてのシャフトの強みであったフォント要素は現在に引き継がれていないのでは感があります。

ab:そもそもそこら辺のセンスは尾石達也さん一人しか持っていなかったのでは……。

あにもに:尾石さんがシャフトにおけるタイポグラフィの大部分を支えていたというのは間違いないでしょうね。『さよなら絶望先生』(2007年)や『まりあ†ほりっく』(2009年)の頃に尾石さんが一人でひたすらテロップを仕込む作業をしていたのは、そもそも尾石さんしか出来る人がいなかったからというか。またノンクレジットではありますが、『ひだまりスケッチ×☆☆☆』(2010年)などにもがっつりと制作に関わっていたわけですし。

苔:とはいえ1話は手探りの中で作っていると思うので、今後変わっていくのかなとも思います。

あにもに:放送直後にツイッターで感想をつぶやいたら西尾維新クラスタからたくさんリツイートされて、いろいろな人のタイムラインを見に行ったのですが、ひとつ面白いなと思ったのは、一部の西尾維新クラスタでめちゃくちゃなシャフトアンチがいて。 

ab:あ、シャフトアンチの西尾維新ファンは普通にいますよね。

あにもに:〈物語〉シリーズ戯言シリーズもシャフトが独自路線で映像化しているので、それに反発している界隈があって、〈物語〉シリーズはともかくとして、そもそも『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』(2016年)の評価はあまり良いとは言えないので……。

highland:古の西尾維新オタクからしたら嫌でしょうね。

あにもに:ただ、今回の『美少年探偵団』に関しては、わりと受け入れられているようでして、悪くない反応でした。「シャフトにしては頑張った」といった感想が多かったです(笑)。

highland:演出や編集の面では結構シャフトっぽいところが残っているんですけれどね。むしろ、近年のシャフト作品の中でもめちゃくちゃシャフトっぽい方だと思います。原作読者からしたら、シャフトっぽいけれど外し過ぎていないということなんでしょうかね?

あにもに:カット割りというよりは、原作のキナコ先生のイラストがアニメできちんと再現されていて嬉しい、といった感想が多かったです。キャラクターデザインの山村洋貴さんの端正な美少年の絵が非常に素晴らしく。

highland:作画はとてもリッチな感じでしたね。

ab:「美」をメインテーマとして扱ってる物語とシャフトの画面作りがマッチしていて、シャフトらしさを残しながら原作の雰囲気と合致していると言えるではないでしょうか。

highland:あとは関係ないギミックを入れたりしていないというところがポイントなんですかね。

あにもに:原作と無関係のギミックといえば、例えば『クビキリサイクル』が分かりやすいのですが、舞台設定が原作小説とアニメではイメージが全然違います。原作はいわゆる本格ミステリ的なクローズドサークルもので、孤島に佇む洋風屋敷が舞台なのに、アニメでは想像を絶するような機械仕掛けの亜空間建築が展開されている。

f:id:moni1:20210417111519p:plain

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』3話「四日目(1) 首斬り一つ」

 

highland:新房監督が『クビキリサイクル』の公開前のインタビューで、今回はミステリ作品だから、例えば動く部屋などがあってしまうとそもそもトリックとして成立しなくなってしまうので、そういう演出はしない方向で作っていく、という風なことを言っていたのですが、実際は訳の分からないくらい動いていましたよね。あれにはさすがに驚きました。 

あにもに:完全にフェイク・インタビューですね。『クビキリサイクル』は『美少年探偵団』とスタッフ的にも共通点があって、大谷監督も演出を手掛けていたりします。

highland:そういえば今回は総作画監督が3人も入っています。

ab:各話の作画監督に複数人が入っているのはアニメーションプロデューサーの安田孝一さんの方針なんじゃないかと思いました。『3月のライオン』2期(2017年)とか『アサルトリリィ BOUQUET』(2020年)とかとスタッフの配陣が少し似ているような気がします。各話作画監督3〜4人の中に、2人がローテーションで2〜3話ずつ入るという配陣なのかなと。

あにもに:座組的にもそうでしょうね。いつ頃からこの企画が動いていたか気になるところです。

highland:今回は絵本っぽいタッチを多用していて、色彩面を含めて全体的に良かったです。回想のシーンや夜のシーンとかもトーンを統一してきれいにまとまっていました。

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『もにラジ』第1回「シャフトの海外受容におけるある種の傾向について」

シャフト作品をガチで語ろうの会『もにラジ』の第1回収録が8月某日行われました。今回はゲストに海外シャフトオタクのabさんをお招きしています。海外視点から見たシャフト作品についていろいろとお話ししました。前回はたくさんの反響、お便り、DMなどなどありがとうございました。引き続きお便りとファンアートはあにもに(@animmony)のDMまで。どしどし募集中です!

参加者プロフィール

f:id:moni1:20200901223758p:plain ab(@abf9

元・海外オタク。いつも4割くらいしか生きてないおじさん。
シャフトアニメの定義が欲しい。

f:id:moni1:20200721220522p:plain あにもに(@animmony

シャフトアニメをたまに観るオタク。めがはーと。
おっきな入道雲を見てると、走り出したくなっちゃう。

  • 【はじめに】
  • 【自己紹介】
  • 【Puella Magi Wikiについて】
  • 【海外の評価について】
  • 【アニメコミュニティについて】
  • 【ファン活動について】
  • 【余談】

【はじめに】

通話を開始してから『Lapis Re:LiGHTs』(2020年)5話と長田寛人作画について長々と雑談してしまった事情によりカット。

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収録風景

【自己紹介】

あにもに:よろしくお願いします。われわれは結構古くからの付き合いで、お互いツイッターを始めて初期くらいのフォロワー関係なので、なんやかんやもう10年近く経ちます。まずはabさんが海外シャフトオタクという話から……。

ab:abと申します。どこかの南の国から来ました。よろしくお願いします。

あにもに:どこかの南の国!どうやって日本語を覚えたか聞いても良いですか?

ab:ぱにぽにだっしゅ!』(2005年)を観て日本語の勉強を始めました。

あにもに:またすごいところから入りましたね。どういう風に勉強したんですか?

ab:最初は独学で文字から覚えて、次に教科書を買って文法を覚えました。もともと読書が好きで小説とラノベにも興味があったので、それを読みながら勉強して、いつの間にか西尾維新の本も読めるようになりました。

あにもに:完全に最強オタクですね。日本人でも小説が読めない人は結構いるのに、その中でも西尾維新が読めるようになるとは……。

ab:自慢ではありませんが、『化物語』(2009年)はアニメ放送前に読破していました。紆余曲折を経て今は日本で働いていますので、僕が今ここにいるのは『ぱにぽにだっしゅ!』とシャフトのおかげといっても過言ではないです。

あにもに:これもシャフトの影響力でしょうか。お互いをツイッター上で認知したのがいつ頃だったか覚えていますか?

ab:魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)の放送中だったような。

あにもに:たぶんそうですね。ちなみに自分がツイッターを始めたのは2011年1月3日で、『魔法少女まどか☆マギカ』の放送直前くらいです。当初は情報収集目的としてツイッターを始めました。

ab:僕も似たような目的です。2010年10月に作りました。

あにもに:咎狗の血』(2010年)の放送で毎週新情報のCMを流していたときですね。当時シャフトの新作をこんな風にCMを打つのかと驚きました。

ab:たしか第一弾か第二段がオンエアされた直後に公式アカウント魔法少女まどか☆マギカ (@madoka_magica) | Twitterをフォローするためにツイッターのアカウントを作成しました。

あにもに:ということはお互い『魔法少女まどか☆マギカ』きっかけということでしょうか。そして放送中にお互いを認識したと。自分のabさんの第一印象は「シャフトに異常に詳しい海外オタク」でした。情報入手のスピードもめちゃめちゃ早くて、一体何者なんだと思いました。

ab:その頃はよくアニメ雑誌を購読していて、たまに日本の発売日と同日で届くことがありました。その中で、『メガミマガジン』(2010年12月号)の鹿目まどかのシルエットが載ってる記事を海外の掲示板に投稿したら、色んな所に出回ってました。

あにもに:シルエットのやつありましたね~。海外のシャフトオタクは日本のオタクよりも詳しい人がそこそこいますが、abさんはその筆頭ですねそこからDM等で個人的にやり取りをするようになったのは、たしか某シャフト研究会きっかけだったような……。

ab:尾石達也研究会ですね。

あにもに:あの研究会があったのって『偽物語』(2012年)の頃くらいでしたっけ?

ab:たぶん『偽物語』が終わった直後です。

あにもに:まだ自分が高校生だった頃の話です。ネット上のシャフトオタクを集めて尾石さんの作風を研究する会をやりました。主催者はまた別の方だったのですが、自分は参加者集め係のようなことをやっていて、それで初めてDMしました。ただそのときはabさんは海外にいらして、タイミングが合いませんでした。

ab:その頃は日本へ遊びに行く機会はなかったので、残念ながら参加できませんでした。参加したかった……。

あにもに:劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』(2013年)の公開時も海外でしたよね?

ab:そうです。なので実はBlu-Rayが発売されるまで観られませんでした。

あにもに:ということは劇場には行けていないと。

ab:ネタバレ回避のためにずっと情報に触れないように生活をしていました。まどか関連のワードをミュートしたり。

あにもに:それで全部ネタバレ回避できました?

ab:だいたい6割くらいは回避できました。ただ「愛よ」は喰らいました。

あにもに:希望よりも熱く絶望よりも深い……。

ab:ただそこに至るまでの展開は何も知らなかったので、Blu-Rayを観たときは初見で楽しめました。セリフは知っちゃいましたが、コンテクストまでは分からなかったので。

あにもに:それもそうですね。abさんとはリアルでも何回もエンカウントしていて、シャフト関連のイベントに行ったらばったり出くわすといったことが多々あります(笑)。

ab:お互いイベントに参加することは特に話していないのに、「あれ、いるし!」みたいな感じで毎回遭遇しますね(笑)。

あにもに:自分はオタクと一緒に行こうといったノリが無いので本当に偶然で……阿佐ヶ谷ロフトAでやった中村隆太郎監督を偲ぶイベントでも一緒になって驚きました。

ab:あれは本当にびっくりしましたね。

あにもに:隣の席で『キノの旅 病気の国 ―For You―』(2007年)を一緒に鑑賞したのを覚えています。あと印象的だったのは『PRISM NANA THE ANIMATION VOL.4 星空編』(2016年)の完成披露上映会でも会いましたね。実際には未完成披露上映会だったものですが……。

ab:一緒に秋葉原UDXタリーズで反省会をしました。もう4年前です。

あにもに:まあ『プリズムナナ』の話は悲しくなるので置いておきましょう。

ab:いや、自分は新房昭之監督に依存しない作品をいつもの演出陣でシャフトが作るという意味でも面白い試みだったと思います。「希望のアドバンス[前編]」もかなり評価していますよ。前編だけやって後編が公開されないのが残念です。

あにもに:たしかに試みとしては面白くて、期待値は高かったです。ただ実際には自分は希望のアドバンス編も特に評価していないので何とも言い難いのですが……とはいえ後半も宮本幸裕監督でやる予定でした。

ab:『プリズムナナ』のYouTubeで期間限定で公開された楽曲のミュージックビデオの中に「希望のアドバンス[後編]」と思しき未公開のアニメーションパートが使われてて、実はちょっとだけ制作に入っていたんじゃないかなと。今はすでに削除されてしまいましたが。

あにもに:そんなのもありましたね。あれを覚えている人が一体どれくらいいるのか正直分かりませんが……。

ab:また「メダルの国のハロウィン~ノリコと妖精~」は大谷肇監督の予定でした。いつか公開されたら前回ゲストだった苔人間さんの感想が聞きたいです。「星空編」はまあ……置いておきましょう。

あにもに:最近だと『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』のゲーム版オープニングアニメーションが公開された際にもコミケで議論しました。沼田誠也演出により、シャフト表現の表層をなぞったようなオープニングについてです。

ab:ありましたね。あとはシャフトの新作情報が公開されるタイミングであにもにさんが開くシャフト会でよく話します。『3月のライオン』(2015年)や『CRYSTAR』(2018年)のときとか。

あにもに:abさんが日本に来られるタイミングで会を開いていたので常連メンバーです。

ab:最近日本に引っ越しまして、これでイベントにもたくさん行けるぞというタイミングでパンデミックが起きてしまったのでとても残念です。

あにもに:コロナもあって、最近はオンラインで何回か通話しましたね。今回はabさんをゲストにお呼びしたので、個人的にも気になっているところであるシャフト作品における海外受容についていろいろとお話を伺いたいと思います。日本にいるだけだとなかなか見えてこないものがあると思うので、いろいろと勉強させてください。

ab:自分は『叛逆』以降は海外ファンとは関わりが少なくなっていて、遠くから見守っている感じになってはいるのですが、それでも良ければぜひ。

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『もにラジ』第0回「演出家大谷肇について」

あらゆるシャフト作品を語る『もにラジ』第0回の収録が7月某日行われました。元々はシャフトファン同士でだべる会を不定期でやっていたのですが、最近はオンラインでやるようになり、思いつきでラジオ形式で録音をしてみました。以下はその様子を文字に起こしたものです。お便りとファンアートはあにもに(@animmony)のDMまで。どしどし募集中です!

◆参加者プロフィール

f:id:moni1:20200721220515j:plain 苔(@_johann_hedwig

新房昭之の追っかけで貴重な時間を無駄にしているオタク。
『劇場版 The Soul Taker 〜魂狩〜』が実在すると思いこんでいるし『本当に』実在している。

f:id:moni1:20200721220522p:plain にもに(@animmony

シャフトアニメをのんびり観るオタク。愛の神。
座右の銘は「魔法少女って最強で、最高で、最笑!」

  • 【はじめに】
  • 【大谷肇さんについて】
  • 【『3月のライオン』について】
  • 【『続・終物語』について】
  • 【『マギアレコード』について】
  • 【おわりに】

【はじめに】

通話を開始してから『かぐや様は告らせたい?〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(2020年)と『かくしごと』(2020年)について長々と雑談してしまった事情によりカット

f:id:moni1:20200721220042p:plain※収録風景

【大谷肇さんについて】

 あにもに:本題に入りましょう。本日はよろしくお願いします。当初『もにラジ』は別のオタクとやる予定だったのですが、そのオタクが4割しか生きていないとの報告を受けまして、急遽苔人間さんに来ていただきました。

苔:苔人間です。よろしくお願いします。

f:id:moni1:20200721220045j:plain
※6割死ぬオタク

あにもに:自分は苔さんのことを勝手に「シャフト最強オタク」と呼んでいるのですが……。

苔:いえいえ、とんでもないです。狂っている方の最狂です。

あにもに:狂っているんですね~。苔さんに来ていただいたからには、シャフトガチ勢として『アサルトリリィ ラジオガーデン』やスタジオIGUSA-1の話などをしたいところなのですが、今回は演出家の大谷肇さんについて話していきたいと思います。

苔:最近とにかくすごいのは大谷さんですね。

あにもに:大谷さんといえば、現在シャフトで最も熱い演出家です。全世界のシャフトファンに「今一番注目している演出家」で緊急アンケートを取ったら、おそらくトップは大谷さんか吉澤翠さんでしょう。はじめに簡単に経歴を確認しておくと、大谷さんは元々イマジン出身の演出家で、マッドハウス作品などを主にやられていました。『NEEDLESS』(2009年)や『ウルヴァリン』(2011年)の助監督などもやっています。

苔:他にもOVAの監督などもやっていました。

あにもに:やまねあやの原作の『異国色恋浪漫譚』(2007年)ですね。ご覧になりましたか?

苔:はい、観ました。

あにもに:さすがです。私もDVDを持っていますが、いわゆるBLアニメで直接的な濡れ場があったり、結構刺激が強めな作品です。また他にも何本かBL作品をやっていました。その後、しばらくしてからシャフトで作品を手掛けるようになります。〈物語〉シリーズや『幸腹グラフィティ』(2015年)などを経て、シャフトの常連演出家になり、最新の『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(2020年)でも2話の絵コンテを担当されました。詳しい情報は各々調べてもらうとして……ざっくり苔さんから見て大谷さんの印象はいかがでしょうか?

苔:『異国色恋浪漫譚』もそうですが、大谷さんが絵コンテ・演出を担当した『NEEDLESS』のオープニングアニメーションなどを観ると、シャフト以前から凝ったカッティングや大胆に画面外を考慮したレイアウトを選ぶ傾向のある演出家ではあったようなのですが、「新房シャフト」に参加されるようになってからは新房昭之監督の特徴的な演出と、シャフトアニメの中で蓄積されてきた手法を非常によく研究されていて、それを応用して演出される方という印象です。

あにもに:なるほど。シャフト演出の研究と応用ですか。

苔:先ほど述べたように比較的傾向がはっきりとしていた演出家ではあるのですが、尾石達也さんのように自身のセンスを重要視して個性を全面に押し出すタイプではなく、あくまで「新房シャフト」というある種の制約の中で、様々なアニメーションの技術を組み合わせている。非常に切れ味の鋭い演出をされる方だと思います。

あにもに:尾石さんや大沼心さんは「新房シャフト」の初期から参加されていた、いわば第一世代にあたる方々ですよね。この世代は新房監督とはまた異なった独自のセンスを発揮して、新房監督の作家性と格闘しながら共同で「新房シャフト」の方法論を作り上げていった。それに対して大谷さんは、第一世代の演出家が抜けた後の演出家と言っても良い。厳密にいえば被っている時期もあるのですが、いずれにせよシャフトが築き上げていった方法論がすでにあって、大谷さんの手法はそこからの偏差として捉える必要があるかと思います。そういう意味で「新房シャフト」という歴史的観点は重要かもしれません。

苔:大谷さんが最初にシャフト作品に参加されたのは2011年ですよね。

あにもに:たしかかってに改蔵』(2011年)4話です。ちょうどこの時期の前後で、元マッドハウスのアニメーションプロデューサー岩城忠雄さんがシャフトに関われるようになって、マッドハウス系の人脈がシャフト作品に多く参加するようになりました。

苔:その時点ですでに『さよなら絶望先生』(2007年)、『ひだまりスケッチ』(2007年)、『化物語』(2009年)などが作られていて、人気作品になっています。2011年だとすでにシャフト演出は完成されていると見て良いでしょうね。

あにもに:分かりやすく言えば、『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)以後の演出家として現れるわけですね。シャフト演出がひとつの確立を見たあとの演出家として位置付けることができる。これは吉澤さんについても同じことが言えると思います。

苔:その中でも大谷さんは非常に挑戦的な映像の組み合わせ方というか、アグレッシブな絵コンテを切ります。主観ですがシャフトの演出に慣れていない演出家の担当回だと一般的なアニメ演出の文法を基準に、そのつど過去のシャフト作品の外れ方を引用していくというか、「シャフトならこうするだろう」といった感じで感覚を調整しつつ絵のイメージを組み立てていると思うのですが、大谷さんはシャフト演出、あるいは新房演出そのものの構造を深く理解する過程を経る事で、最初からシャフト演出の文法として構成した映像を組み込んでいらっしゃるような感覚があります。

あにもに:構造の把握ですか。ちなみに苔さんが大谷さんを最初に意識したのはいつ頃からですか?

苔:最初に注目したのは『3月のライオン』(2016年)の第2シーズンです。テンポの取り方が上手い方だなと思いました。『ニセコイ:』(2014年)の11話と12話でも同じような感じはありました。

あにもに:自分はまさに『ニセコイ:』の11話で本格的に意識するようになりました。特に後半の小野寺の中学時代のエピソードです。原作に描かれていた1枚の挿絵からイメージを膨らませた1分少しのオリジナルシーンがあるなど驚きました。しかも一発でオリジナルだなと分かる雰囲気が出ていた(笑)。あと冒頭の手を使った演出もオリジナルですよね。

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ニセコイ:』11話「オハヨウ」

苔:ニセコイ:』は11話が大谷さん絵コンテで、演出が岡田堅二朗さんです。逆にその次の12話が岡田さんと数井浩子さんが絵コンテで、大谷さんが演出をやっています。この二つを比較すると、大谷さんの処理演出としての上手さを感じます。発想の引き出しが幅広く、処理演出の暴れっぷりがはっきりしているというか。

あにもに:たしかに対になっていますね。今思い出したのですが、最近新房監督が大谷さんの『3月のライオン』19話と、吉澤さんの『続・終物語』(2019年)5話の演出を書籍上で褒めていました。

苔:大谷さんについてはBlu-rayのブックレットインタビューで触れられていましたね。新房監督が大谷さんの絵コンテを見て「うなった」と言っていたのが印象的でした。

あにもに:「うなった」ですか?

苔:「うなった」は新房監督がなかなか使わない表現で、かなり珍しいんです。私の記憶が正しければ、尾石さんの『ネギま!?』(2006年)OPを見た時に新房監督が「うなった」と仰っていました。あとは記憶が定かでは無いのですが、笹木信作さんにもうなっていたような気がします。つまり、大谷さんは新房監督を「うならした演出家3人目」ということになります(笑)。

あにもに:なるほど(笑)。『3月のライオン』では新房監督が大谷さんの19話の絵コンテを見てうなって、OP2のディレクターを依頼したという経緯が語られていました。今回は、大谷さんの演出で直近に担当された『3月のライオン』、『続・終物語』、『マギアレコード』の3作品を取り上げて、好き勝手あれこれ言っていく形にしたいと思います。

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