『もにラジ』全#まとめ
『もにラジ』は「シャフトについてめちゃめちゃ詳しいオタクをゲストに呼んで、いろいろな角度から思う存分語ってもらおう!」がコンセプトの座談会シリーズです。座談会と言いつつも、一視聴者が完全なる内輪のノリでやっているだけですので、ゲストとして声を掛けているのは個人的に信頼を置いている親交のある友人ばかりではありますが、その分シャフト作品について楽しく、時に批判的に自由奔放に語り尽くしています。
いずれの記事も明確な繋がりはなく、毎回別々のテーマ(作品の感想、演出論、受容論等)についてトークしていますので、興味があるものをクリックして読んで頂けると嬉しいです!
テーマ:大谷肇
ゲスト:苔さん(@_johann_hedwig)
初めての『もにラジ』では演出家の大谷肇さんを取り上げました。記事の中で主に言及しているのは『3月のライオン』、『続・終物語』、『マギアレコード』の3作品です。チーフ演出や監督を務められた『アサルトリリィ BOUQUET』や『美少年探偵団』の放送前に収録したものなので両作には触れられておらず、今となっては作品選出が少し不思議に感じられるかもしれませんが、当時の雰囲気を感じ取ってもらえれば嬉しいです。
テーマ:シャフト作品の海外受容
ゲスト:abさん(@abacus_ha)
当初『もにラジ』はabさんと企画を進めていて、最初は2人でレギュラーでやろうとしていたものでした。シャフト作品の海外受容については、ほとんど知られていないトピックだと思いますので、abさん自身の経歴を含めて、かなり読み応えがあるのではと思っています。
テーマ:『美少年探偵団』1話
ゲスト:highlandさん(@highland_sh)、abさん(@abacus_ha)、苔さん(@_johann_hedwig)
『美少年探偵団』1話の放送直後に感想会を収録をしました。間違いなく大谷監督の代表作となることを確信していて、興奮冷めやらぬオタクたちの姿が見られると思います。
テーマ:『傷物語』
ゲスト:水野さん(@potatovirusXXXX)
これまで取り上げてきたテーマと異なって、やや批評寄りの記事になっています。『傷物語』自体が批評的な作品である、という理由もありますが、水野さんの各分野における切り口が非常に鋭く、勉強させて頂きながらいろいろな角度から語っています。
テーマ:『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-』1話
ゲスト:北出さん(@sr_ktd)、abさん(@abacus_ha)
『マギアレコード』のアニメ2期放送直後に感想会を行って、当初は記事にするかどうかも決まっていなかったのですが、結果的にゲームとアニメについて膨大に語り尽くす会となりました。27,000字超えとなっており、長大な記事になってしまっていますが、ゲームとアニメそれぞれの魅力について語っていて、オススメの記事です。
テーマ:『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-』
ゲスト:北出さん(@sr_ktd)、abさん(@abacus_ha)
第4回に引き続き『マギアレコード』2期を取り上げて、『もにラジ』初の試みとしてアニメ全体の振り返りを行う大感想会を行いました。予定ではFinal SEASONの告知と同時に記事を投稿するつもりだったのですが、残念ながら放送が延期となってしまいましたので、普通に投稿しました。アニメ2期はシナリオ面で賛否が別れるような出来だったかと思いますが、それらの要素について嘘偽りなく正直に善し悪しを語り合っています。ぜひFinal SEASONを観る前に予習的な形で読んで頂きたいです。
テーマ:『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 Final SEASON -浅き夢の暁-』
ゲスト:北出さん(@sr_ktd)、abさん(@abacus_ha)
アニメ完結記念で3度目となる『マギアレコード』特集です。衝撃的なバッドエンドを迎えてしまったアニメに対してどのような読解を導くことが可能なのか真剣に議論を重ねています。第4回から連続して『マギレコ』を取り上げてきましたが、ご協力くださった北出さんとabさんには感謝しかありません。
テーマ:2021年のシャフト
ゲスト:abさん(@abacus_ha)
初出は同人誌『号外もにも~ど』に掲載した2021年の総括記事です。紙面上では載せられなかった画像やリンクをたくさん入れてみました。収録自体は2021年12月上旬に行ったので、まだ『マギアレコード』の年末特番の話をしていたり(直前で延期になりました)、逆に『RWBY 氷雪帝国』の話などは一切出てきません。ただこの記事で2021年がシャフトにとって様々な意味でターニングポイントの年だった、ということが伝われば幸いです。
テーマ:『五等分の花嫁∽』
ゲスト:mochimizさん(@mochimiz09982)、abさん
2023年7月14日に劇場で先行上映されたテレビスペシャル版『五等分の花嫁∽』の感想会です。『五等分』シリーズについて純粋に楽しく話し合っていたり、シャフトアニメの演出について詳細に検討していたり、とても充実した感想会になっています。
テーマ:2023年のシャフト
ゲスト:mochimizさん(@mochimiz09982)、abさん
初出は同人誌『外伝もにも~ど』に掲載した2023年の総括記事です。収録した時点ではDaisy×Daisyホールワンマンライブで『プリズムナナ』の未公開映像が流れたことも、年明けに『さよなら絶望先生』のトークイベントがあることも、『傷物語 -こよみヴァンプ-』の劇場物販に計890ページの絵コンテ集が付くことも知らないので、あらためて読み返すと何とも呑気なことを言っているなあという印象を受けますが、そうした緩さを含めて読んで頂けると幸いです。
テーマ:2024年のシャフト
ゲスト:mochimizさん(@mochimiz09982)、abさん
初出は同人誌『伝承もにも~ど』に掲載した2024年の総括記事です。2024年は『傷物語 -こよみヴァンプ-』の公開と〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンの放送があって、息つく間もない目まぐるしさの中で濃密な喜びを味わうことができた一年でした。また、それ以外にも近傍シャフトとして『アンデッドアンラック』や『小市民シリーズ』をはじめとして様々な作品があり、それらすべてをカバーしている45,000字の座談会となります。シャフトにとっても、2024年は確実にひとつの達成だったと思います。
テーマ:『忍者と殺し屋のふたりぐらし』
ゲスト:mochimizさん(@mochimiz09982)、abさん
2025年4月新作アニメ『忍者と殺し屋のふたり暮らし』第1話についての感想会です。1話の放送直後に収録をしており、テンション爆上がりで語っています。『にんころ』について深堀りをしながら、同時に「新房シャフト」の歴史も簡単にまとまっています。
note移行のお知らせ
このブログを読んでくださっているオタクの皆さまへ、ひとつ遅すぎるお知らせを申し上げます。
まず何よりも、これまで本ブログに関心を寄せ、定期的にお読みくださった皆さま、そして登録を通じて継続的にお付き合いくださった方々に、深く感謝を申し上げます。断片的なメモであれ、批評的な論考であれ、それらを誰かが読んでくださっているという事実が、この場を続ける支えとなってきました。
すでにご存じのオタクもあるかもしれませんが、今年の5月よりnoteへと移行しております。正確に言えば、「これから移行する」のではなく、「すでに移行していた」というのが実情です。これまでこちらで公開してきた論考、資料の紹介、あるいは覚え書きとしての短い文章は、今後はすべてnoteにおいて更新してまいります。形式が変わっても、書き続けることそのものに変わりはありません。
今後も、これまでと同様にシャフトに関連する話題を中心に取り上げ、時には周辺的な主題に触れながら記録を積み重ねていくつもりです。もしこれまでの文章に何らかの関心を見いだしていただけたのであれば、ぜひ引き続きnoteにおいてもお付き合いくだされば幸いです。
そして、これまでと変わらず、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』スタッフクレジット
スペシャルサンクス Special Thanks
TVアニメおよび劇場版に関係する全てのスタッフさま / The entire TV anime and movie staff
ゲーム舞台設定原案 Game Stage Concepts
劇団イヌカレー(泥犬) / Gekidan InuCurry (Doroinu)
ロゴデザイン Logo Design
有限会社BALCOLONY. / BALCOLONY. Co., Ltd.
染谷洋平 / Yohei Sometani
声の出演 Cast
ナマエ(Name):小宮山あかり / Akari Komiyama
A-Q:竹達彩奈 / Ayana Taketatsu
ヨダカ(Nighthawk):花澤香菜 / Kana Hanazawa
【オープニングアニメーション】Opening Animation
監督・絵コンテ・演出 Direction/Storyboard/Animation
笹原嘉文 / Yoshifumi Sasahara
総作画監督 Supervising Animation Director
谷口淳一郎 / Junichiro Taniguchi
杉山延寛 / Nobuhiro Sugiyama
山村洋貴 / Hiroki Yamamura
作画監督 Animation Director
滝山真哲 / Masaaki Takiyama
村木智彦 / Tomohiko Muraki
原画 Keyframe Animator
滝山真哲 / Masaaki Takiyama
矢田梓 / Azusa Yada
葉鑫 / yexin
Atelier Gokujou
SimonBeed
尤齊 / Yu Chi
長谷川圭 / Kei Hasegawa
塩田学 / Manabu Shiota
椎香貞正 / Sadamasa Shiika
堀虎ノ介 / Toranosuke Hori
阿部尚人 / Naoto Abe
木曽勇太 / Yuta Kiso
第二原画 Secondary Keyframe Animator
PINE JAM
木村優花 / Yuka Kimura
川畑有澄 / Arisu Kawabata
金井亜希子 / Akiko Kanai
船橋翼 / Tasuku Funabashi
笹川弥幸 / Miyuki Sasagawa
鈴華勇太 / Yuta Suzuhana
artxcool
小氷 / KOKOORI
李育蓁 / LeeYZ
Celest
Kaien Jin
Matis Braun
佐藤千春 / Chiharu Sato
佐々木美穂 / Miho Sasaki
動画検査 Animation Checker
川畑有澄 / Arisu Kawabata
動画 In-Between Animator
PINE JAM
清水啓生 / Kei Shimizu
橋本新太 / Arata Hashimoto
グレーン
GRAIN
无锡市櫻花卡通有限公司 wuxi huaxian / WUXI SAKURA CARTOON
色彩設計 Color Setting
日比野仁 / Hitoshi Hibino
色指定・検査 Colorist/Checker
大野千紘 / Chihiro Ono
川上優子 / Yuko Kawakami
仕上げ Touch-Up
グレーン / GRAIN
无锡市櫻花卡通有限公司 wuxi huaxian / WUXI SAKURA CARTOON
TP修正 TP Correction
川畑有澄 / Arisu Kawabata
大毛恭平 / Kyohei Daimo
神谷友亮 / Tomoaki Kamiya
結城貴光 / Takamitsu Yuki
背景 Background
PINE JAM
斎藤健太 / Kenta Saito
渡邉拓人 / Takuto Watanabe
高橋駿太 / Syunta Takahashi
原和希 / Kazuki Hara
小林龍平 / Ryuhei Kobayashi
並木健斗 / Kento Namiki
3DCG
LDH Animation
松浦宏樹 / Hiroki Matsuura
春日健一 / Kenichi Kasuga
佐竹大樹 / Daiki Satake
堀中雄太 / Yuta Horinaka
桝山慎太郎 / Shintaro Masuyama
鈴木大輔 / Daisuke Suzuki
撮影監督 SFX Director
会津孝幸 / Takayuki Aizu
編集 Editing
宮崎直樹 / Naoki Miyazaki
素材協力 Materials Cooperation
劇団イヌカレー(泥犬) / Gekidan InuCurry (Doroinu)
協力 In Cooperation With
PINE JAM
向峠和喜 / Kazuki Mukaitouge
中田修平 / Shuhei Nakada
志水広司 / Koji Shimizu
アソシエイトプロデューサー Associate Producer
和田昌之 / Masayuki Wada
臼木太一 / Taichi Usuki
西部真帆 / Maho Nishibe
柴山義昌 / Yoshimasa Shibayama
制作プロデューサー Production Producer
廣兼正彦 / Masahiko Hirokane
制作担当 Production Management
網谷一将 / Kazumasa Amitani
糸井智謙 / Tomaki Itoi
制作進行 Production Coordinator
大本悠太 / Yuta Omoto
アニメーション協力 Animation Cooperation
PINE JAM
制作協力 Production Cooperation
LDH Animation
制作 Production
シャフト / SHAFT
【株式会社シャフト】 Shaft. INC
久保田光俊 / Mitsutoshi Kubota
西部真帆 / Maho Nishibe
吸血鬼黙示録──『業物語』「あせろらボナペティ」における光の演出のメモ

舞台の光──物語の語り方
『業物語』の一篇「あせろらボナペティ」を視聴して、まず最初に強く感覚を揺さぶられたのは、冒頭における語りの演出でした。
本作の語り手を務めるデストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター(このネーミングセンスは一体?)が、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(素晴らしいネーミングセンスと言わざるを得ません!)、あるいは旧アセロラ姫について述懐するこの独白は、語りの内容と視覚表現の両面において、本作の主題を先取りする導入となっています。
「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードってえ名前は、俺様が考えてやった。自分で言うのもなんだが、クールでハードで、最っ高にいい名前だ。……だけど、正直に言うと、俺様はそのことを、少しだけ後悔してもいる。俺様はあいつに、名前をつけるべきじゃなかったのかもしれないと思うんだ──ほら、よく言うだろう?ペットに名前をつけたら情が移るって。その情が、友情だったのか愛情だったのか、それとも劣情だったのかは、今となっちゃあ定かじゃねえが。しかし確かに言えることがひとつある。あれは食欲じゃなかった。だってキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードじゃあ、料理の名前としちゃ、あんまりいけてねえだろう?」
──『業物語』第零話「あせろらボナペティ 其ノ壹」

特筆すべきは、冒頭の4カットにおいてすでにその存在感を強烈に示している「光」の表現です。スポットライトによって幕が切って落とされる演出は十二分にインパクトがありますが、なかでも決定的な効果をもたらしているのは、語り手であるスーサイドマスターが複数体登場する点にあります。
ここで登場する複数のスーサイドマスターは、身体の大きさが少しずつ異なります。スーサイドマスターは、物語の中盤で明かされる通り、死ぬたびに生き返り、そのたびに身体が縮んでいくという特異な資質を持つ「決死にして必死にして万死の吸血鬼」です。
アニメではこの設定を始めから視覚的にほのめかし、最初に現れるのが「最後の姿」であるという逆順の構成は、この物語がすべてが終わったあとから語られるものであることを示しています。

スポットライトの光に照らされるスーサイドマスターの身体は、ただ舞台上に並べられているわけではありません。
とりわけ注目したいのは、最後に現れる四体目、すなわち、物語の始まりに位置づけられている、まだアセロラに出会っていない頃のスーサイドマスターの登場の仕方です。この最後の身体だけ、上からではなく、真後ろから激しい光を浴びており、完全な逆光として映し出されます。
この逆光のもとでは、スーサイドマスターの顔は影に沈み、表情を読み取ることはできず、ただ輪郭だけが浮かび上がります。スポットライトとは本来、舞台上の演者を際立たせるための光ですが、ここではむしろ視聴者の視線を拒むように働き、焦点をあえて外してみせます。
この時点のスーサイドマスターは、アセロラの魔性にも、激情にも、愛情にも触れていません。これからスーサイドマスターの身に起こるすべては、まだ何ひとつ経験されていないのです。過去の姿でありながら、未来の運命をすでに背負っている、その背に当たる逆光は、これから語られる出来事の影を、あらかじめその身に落とし込んでいるかのように映ります。
「あせろらボナペティ」において、光はつねに人物の内面、倫理、関係性、そして時代を照らす働きを担っています。それぞれの光が異なる意義を帯びながら、スーサイドマスターという謎に包まれた怪異をひとつの像として浮かび上がらせていくのです。冒頭のスポットライトの演出は、これから紡がれる光の物語の序章として、ある吸血鬼譚を自律的に語り始めています。
この記事では、こうした光をめぐる固有の演出に注目しながら、本作がどのようにして組み立てられているのかを考えていきたいと思います。
蝋燭の光──死体城を包む重力
物語の冒頭から一貫して用いられる蝋燭の灯火は、600年前という時代設定を視覚的に印象づけるだけでなく、時間そのものの質感を表現する手段として機能しています。現代的な照明は排除され、スーサイドマスターが根城にしている死体城を照らすのは、蝋燭の灯火だけです。

蝋燭の灯火は、ただ視界を確保する照明ではありません。それはむしろ、この物語の奥底に沈む死と時間の感覚を浮かび上がらせるために配された光です。ゆらゆらと揺らぎ、次第に弱まり、やがて消えゆく蝋燭の灯火は、時間が絶えず終わりへと向かって進んでいくという、逃れようのない運命を体現しています。
この象徴性が最も強く響き合うのは、やはりスーサイドマスターの自死と再生の描写においてでしょう。死してなお蘇り、そのたびに身体が縮んでいく万死の吸血鬼にとって、死とは終着ではなく、永続的に繰り返される反復と循環のプロセスにほかなりません。
蝋燭が一般的に生の儚さや死の香りと結びつくことを考えれば、これは一見すると相容れないモチーフにも映ります。しかしながら、本来であれば終わりを告げるはずの蝋燭が、死体城の内部では不自然なほど無数に灯され、画面全体を覆い尽くしていることに注目すれば、その意味合いはたちまち反転します。
そして何より、この蝋燭はまるで意思を持つかのようにひとりでに火を灯します。また、本作では蝋が垂れる様子が一切描かれないことにも着目すべきでしょう。死体城の蝋燭は、怪異現象そのものです。

蝋燭の灯火が一斉に消えることはなく、終わりはつねに先延ばしにされ、カットが切り替わるたびに新しい蝋燭が並べられているかのように見えるそれは、消えることの連続が作り出す一種の永遠と言えます。生と死のあいだを何度も行き来する、曖昧で終焉の見えないスーサイドマスターの在り方が、夥しい蝋燭によって視覚化されているのです。
蝋燭の灯火には安定さがありません。揺らぎがあり、瞬間ごとにその表情を変えながら、それでもなお場を照らし続けます。生きているとも、死んでいるとも言い切れない、その不確かさに身を置くスーサイドマスターの身体感覚こそが、蝋燭の灯火に託されています。

また、蝋燭が生み出す深い陰影は、ゴシック・ホラーの様式を支える美術的効果としても重要です。死体城は、単なる舞台装置ではなく、時間が澱のように滞留し、死者たちの記憶が折り重なる場所として描かれています。
たとえば、スーサイドマスターが玉座に座して、奴隷であるトロピカレスク・ホームアヴェイヴ・ドッグストリングスと会話する場面では、蝋燭の揺らめく光が金髪や瞳に鈍い輝きを与えます。光は、人物を明るく照らすというよりも、むしろ闇に沈ませながら、その輪郭だけを浮かび上がらせるような効果をもたらしています。ゆえに、荘厳さと深遠さが同時に漂う、宗教的な儀礼にも似た空気が画面を満たします。
したがって、蝋燭の灯火が照らすのは、肉体ではありません。そこに映し出されているのは、吸血鬼の精神性、あるいは美学そのものです。この空間の重さを決定づけているのが、ほかならぬ蝋燭の灯火なのです。
料理の光──人間の証明
スーサイドマスターとアセロラが初めて出会う場面において、最も印象的なのは、鍋でポトフを煮込む火の描写でしょう。
蝋燭の灯火が静謐で儀式的な時間を死体城に照らしていたのに対し、ここでの火は生活の印であり、生きた人間の営みとして立ち現れます。

アセロラが自ら火を起こし、料理をするということ。その火の光が彼女の表情や手元をやわらかく照らしていることは、アセロラがまぎれもなく人間であるということを示す視覚的な証拠です。
赤く燃える火の色は、アセロラの肌に血の通う温もりを与え、彼女の存在を生命の側に位置づけます。対照的に、スーサイドマスターが映るカットからは暖色が抜け落ち、冷たい色調が支配しています。この色の落差が、両者のあいだにある決定的な距離を示しているのです。
この場面での火は、光源や暖房ではなく、文明の象徴として描かれています。火を使って食事を作り、誰かと食卓を囲むという行為は、共に生きるルールを共有することにほかなりません。食べることとは、共にあることの表れであり、生きることの最も根源的な形式です。

なお、この一連のシーンでは暖炉の火と、机の上に置かれた三本の蝋燭という対比的な光が登場します。暖炉の火はアセロラの人間性を表す一方で、三本の蝋燭は、スーサイドマスターが三度にわたり自死を繰り返す反復構造と呼応しており、視覚的にも死のリズムを可視化する仕掛けとなっています。
このシンプルながら意義深い構図は、やはり光に別々の意味を持たせることによって成立しています。
美貌の光──不可視の暴力
アセロラが初めて登場する場面、もしくは彼女が可憐な所作を見せるたびに、画面にはきわめて誇張されたキラキラとした光のエフェクトが撮影処理で加えられています。
これはアニメーションならではの記号的な表現であり、現実的な光源とはかけ離れた人工的な美の照明です。物理法則をまるで無視した光の散乱は、リアリズムから意図的に逸脱することによって、彼女の持つ神聖さ、ひいては化物じみた怪異性を視覚的に強調しています。

この誇張された光は、客観的な現象としての発光ではなく、スーサイドマスターの視線を通じて現れているものと解釈するべきでしょう。
アセロラの光は、彼女を眼差してしまった者にしか見えず、それでいて目撃した瞬間に命を落とす危険性のある致命的な視覚です。スーサイドマスターはアセロラの美に圧倒され、欲望と倫理のはざまで引き裂かれ、何度も自死へと追い込まれます。
ここにあるのは、美しさと死の結びつきです。アセロラの美は、魅了する力であると同時に、破壊する力でもあります。視覚的には華やかであっても、その光は明確に死の引力を帯びたものです。この光は、破壊的な美の現前をアニメ的なデフォルメの表現によって浮き彫りにしています。

こうした文脈を踏まえると、アセロラがスーサイドマスターの提案で「悪ぶる」振る舞いをしようとする場面で、彼女にさまざまな色合いの光が当てられる演出も、意識的な演出意図として読み取ることができます。それは、美という属性を意図的に操作しようとする試みにほかならず、しかしその無垢さゆえにどこか滑稽でもあります。
さらに注目すべきは、アセロラが自らの美を汚そうとして、銀の燭台を手に取り、その先端を右眼に突き刺そうとする一連のシーンです。結局、この行為は未遂に終わりますが、ここでもまた燭台、すなわち光の源が、自傷というかたちで彼女の視覚を剥奪する役割として結びついて登場する点は見逃せません。
アセロラはこの自傷行為を「海賊」をイメージしたものだと説明しますが、見る者を魅了し、破滅させるその美を否定するには、自らを傷つけるしかない、その自己破壊が、光の道具である燭台を通じて表出しているのはきわめて興味深いと言えるでしょう。
もちろん、原作でスーサイドマスターが述べるように、海賊もまた片目を負傷しているからアイパッチをしているのでは必ずしもなく、ある種の「見せかけ」としての意味合いもあるわけですが。
満月の光──祝祭と呪い
原作と比較したときにアニメ版における最も重大な改変のひとつは、クライマックスにおけるスーサイドマスターの吸血の場面を、小説には存在しなかった「死体城の屋上」へと移した点にあります。
この変更は、単なる舞台転換にとどまらず、視覚的にも物語的にもきわめて詩的な効果を備えています。なぜならば、屋上に降り注ぐ満月の光が、スーサイドマスターとアセロラの関係の変容を、神話的な祝祭へと昇華しているからです。

月光は、蝋燭や料理の火といった人の手による光とは異なります。それは人工的ではなく、所有も制御もできない自然の照明であり、超越的なものです。蝋燭が死を、火が人間性を照らしてきたとすれば、満月の光は、彼女たちがもはや人間の理を超えた存在となるその瞬間を照らしています。
スーサイドマスターがアセロラの血を吸う場面は、儀礼的な一種の契約として描かれています。吸血は単なる捕食ではなく、生命の境界を侵犯する行為であり、それが満月のもとでなされることによって、「吸血鬼の誕生」は宗教的な荘厳さを帯びた儀式へと変貌します。
ここでアセロラは、「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」という名を与えられ、未知の存在へと生まれ変わります。満月の光は、その変貌を見届ける天上の証人のように、命名と変容の儀式に立ち会っています。
〈物語〉シリーズにおける最大の主題のひとつでもある「名前が存在を規定する」というテーマに沿うように、月光は存在の変化を受け止める世界そのものとして描写されています。

と同時に、満月の光はその誕生が人間としてのおしまいであることも告げています。スーサイドマスターがアセロラに与えたのは吸血鬼としての力や永遠ではなく、不可逆の変化であり、後戻りの叶わない生のかたちです。月光はここで、倫理や時間を超えた人外の視線として機能し、ふたりの関係に祝福と呪いを同時に与える複合的な効果を果たします。
このように、満月の光は命名と変貌の交点に立ち、運命を照らしながら、物語の主題を映し出しています。それは祝福と呪いが切り離せずに共存する、重層的な照明です。
現代の光──600年後の世界
物語の終盤、舞台は一気に600年後の現代へと移ります。これまでシネスコのフレーミングだった画角が解放されて、現代の映像に変化するわけですが、しかしどこかその雰囲気は暗さを保ったままです。
実際、そこで登場する光のありようは、これまで作品を通して重ねられてきた蝋燭の灯火、生活の火、神話を宿した月光とはまったく異質なものです。飛行機の航空灯、街灯、信号灯、踏切の警報灯。それらはすべて、均質で機能的で、人間が制御することを前提とした現代的な電気の光です。

この光の転換は、時代の移り変わりを示す記号というだけではありません。そうではなく、かつて聖なる意味を宿していた光が、現代という合理性の時代において、いかにして脱魔術化されたかを明らかにしています。
電気の光は効率的で便利である一方で、祝祭性や神話性は帯びていません。危険を示す信号も、位置や方向も示す灯りも、世界を照らすというより、世界を管理し、区分し、制御するための光へと変質しているのです。
祝祭や儀礼の残り香をまとわないこの光のなかでスーサイドマスターは、もはや死を統べる者でも、異形の存在でもありません。かつて死体城の主として君臨していたこの吸血鬼は、いまや都市の隅にひっそりと息をひそめる影のような存在となっています。

スーサイドマスターはかつてアセロラと初めて出会った住処を訪れ、誰もいなくなった空っぽの空間をじっと名残惜しそうに見つめます。机の上には空のワイングラスと、溶けた蝋燭。それは時間が静かに抜け落ちたあとの景色であり、スーサイドマスター自身の現在地をそのまま映し出します。
空のワイングラスもまた血を失ったスーサイドマスター自身のようであり、その縁を撫でる手つきには、言葉にならない記憶の重みが滲んでいます。かつて光が交錯し、関係が切り結ばれた空間は、いまや静寂と空洞のなかにしかありません。

そして辿り着いたラストカット。スーサイドマスターは、ワインの注がれたグラスを手に取り、ひとり乾杯をします。誰に向けたものでもない、しかし、たしかな意味を持った祝杯。グラスと液面にわずかに揺れる光は、血の記憶、名づけの痕跡、ふたりのあいだに交わされた関係の余韻を、かすかに浮かび上がらせます。
現代の光は世界に意味を与えません。そのなかでスーサイドマスターにとって唯一意味のある光があるとすれば、それはこのグラスに宿る小さな光でしょう。人工光に埋もれていた残響が、スーサイドマスターの心象風景のなかで、ひそかに再生されます。
600年後、キスショットは極東のある島国で、ある人間に出会って、自らの名前を失います。しかし、名づけによって始まり、名前を失ってもなお続く眷属関係は、今もこの光のなかに脈打っています。
こうして「あせろらボナペティ」は、文字通り、光に始まって、光で終わりを迎えます。
光の物語──そして『忍物語』へ
これまで見てきたように、本作は光の表現を通して、スーサイドマスターの美学、名づけと呪い、美と死の交差点にある倫理的な問いを、アニメという形式によって鮮烈に視覚化した作品です。
繰り返しにはなりますが、光は単なる照明ではなく、それぞれ異なる意義を持った光が、登場人物の内面を映し出し、時代の輪郭を描き、語りの調子をさえ変化させています。
吸血鬼という存在が、いつも夜と共に語られてきたことを思い出せば、本作における光の豊かさと逆説性はより一層際立って見えてきます。闇に棲むはずの者たちが、光のなかで可視化され、語られることによって輪郭を得ていく。そこにこそ、「あせろらボナペティ」の抗いがたい魅力が宿っていると言えるでしょう。

そして物語は、『忍物語』へと続いていきます。時はふたたび現代に戻り、あの光のなかで交わされた血と名づけの記憶が別のかたちで再演されることになります。
スポットライトを浴びたふたりの吸血鬼の物語が、いかなるかたちで過去の影を引き継いでいくのか。それについては、また別の機会にあらためて論じる必要があるでしょう。
『もにラジ』第8回「『忍者と殺し屋のふたりぐらし』最速感想会」
シャフトオタクたちが織りなす雑然たる饗宴こと『もにラジ』。第8回では2025年4月新作アニメ『忍者と殺し屋のふたり暮らし』第1話について、シャフト批評合同誌『もにも~ど』の共同編集者であるabさんとmochimizさんと感想会をしました。
放送直後の突発的な集まりということもあり、各自が自由に語り合う、ある種の熱量の奔流のような場となりました。一見すると、アニメの面白さにあてられて語りが止まらなくなっているように見えるかもしれませんが、そこには作品やスタジオとしてのシャフトを読み解く上で重要な論点がいくつも含まれていたように思います。ぜひ、その熱気ごと含めて一読いただければ幸いです。
お便りとファンアートはあにもに(@animmony)のDMまで。どしどし募集中です!
◆参加者プロフィール
mochimiz(@mochimiz09982)
『青騎士』のリニューアルに伴って本棚のレイアウトを再検討しているオタク。
『アオハル』然り、サブカル作家を青田買いする漫画雑誌が何故青色に拘る傾向にあるのかつねに微妙に気になっている。
ab(@ab.denki.gg)
唐揚げ定食美味しいです。
あにもに(@animmony)
とはいえシャフトアニメを観るオタク。忍野忍ばない。
『Be My Friend』も好きだし、『Pride of the Underdog』もきっと好き。
〈物語〉シリーズ 七夕展示イベント2024 全まとめ
『#物語シリーズ 七夕展示イベント』池袋本店で展示していた「短冊」が全国10店舗にて展示決定!
— 株式会社アニメイト (@animateinfo) 2024年7月12日
■期間:7/18(木)~7/31(水)
■開催店舗:仙台店、横浜ビブレ店、札幌店、名古屋店、大阪日本橋店、福岡パルコ店、新潟店、京都店、岡山店、広島店 https://t.co/X86ksH1Aqb
やや時期は遡りますが、2024年7月5日から7月11日にかけて、アニメイト池袋本店にて、〈物語〉シリーズの七夕展示イベントが開催されました。
アニメイト池袋で開催中の〈物語〉シリーズの七夕展示に来た。例年七夕はシャフトスタッフが『絶望先生』の黒板ネタのごとく大量にネタを仕込んできたけれど、今回も勢揃いでウエダハジメから尾石達也までいて圧巻だった。あと自由に書いて飾ることができたので、神アニメーターとコラボしてしまった! pic.twitter.com/d6q2DboFmR
— あにもに (@animmony) 2024年7月5日
この七夕イベントは、〈物語〉シリーズの関連キャンペーン「西尾維新祭」の一環として、2012年から毎年恒例となっていたリアルイベントです(なお、2010年および2011年は公式サイト上で写真が公開されていました)。過去にはJR秋葉原駅構内にて、スタッフやキャストによる直筆の短冊が展示されており、キャラクターの短冊などはすべて西尾維新による書き下ろしでした。
毎年このイベントでは、アニメ制作スタッフが『さよなら絶望先生』の黒板ネタさながらに、ユーモアと遊び心あふれる短冊を多数用意してきました(中には個人で複数枚描いてくれるという嬉しさもあります)。厳しい制作スケジュールの中、こうした工夫と熱意あふれる展示を毎年届けてくださることに、ファンとしては歓喜と感謝の気持ちを抱かずにはいられません。
ところが、この七夕イベントは、『続・終物語』のテレビ放送および〈物語〉フェス ~10th Anniversary Story~が開催された翌年の2020年を最後に、開催が途絶えていました。〈物語〉シリーズのメディア展開としては、いったんここで一区切りを迎えた、ということだったのかもしれません。それから時を経て、昨年、〈物語〉シリーズがあらためて再始動し、オフ&モンスターシーズンの放送開始をきっかけに、この七夕イベントも待望の復活を遂げました。
本イベント終了後には、アニメイト各店舗で短冊の再展示が行われました。ただし、すべての短冊が展示されたわけではなく、厳選された一部のみの公開となったようです。選定の結果、取りこぼされたものをそのままにしておくのは、あまりにももったいないと感じたため、ここに備忘録として簡単にまとめておきます。
なお、都合により撮影できなかった短冊や、当日見落としてしまって気づかず撮影しそびれてしまったものも一部あるかもしれません。不備や抜けがありましたら、ご指摘いただけると大変ありがたいです。また、スタッフ名については、一部推測に基づいて記載しているものもあります。あらかじめご了承ください(ちなみに、今回は羽川翼による短冊が存在しなかったことが、一部界隈でちょっとした話題となっていました。これについては、オフ&モンスターシーズンの今後の展開に関わる可能性があるため、ここで深く踏み込むことは控えますが、もしも意図的な演出だとすれば、なんとも巧妙としか言いようがありません)。
『忍物語』「しのぶマスタード(上)」Blu-rayリテイクリスト

本記事では、『忍物語』「しのぶマスタード(上)」に収録されているエピソード「しのぶマスタード 其ノ壹」「しのぶマスタード 其ノ貮」におけるBlu-ray版のリテイクを取り上げています。これまでのリテイクリストは下記記事にまとめています。
「しのぶマスタード」はABEMAでの配信終了後、地上波放送版においてすでに大幅なリテイクが施されていました。
『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ壹」ABEMA版とテレビ版の比較をしてみると、修正がちょっと恐ろしいレベルで全編にわたって入っていた!このレベルのリテイク量を特に宣伝せずにしれっと流しているのも凄いが、さらにBlu-ray版では『愚物語』に新規OPも付くようで、やはり〈物語〉シリーズは怖い。 pic.twitter.com/0QDRWKOEIq
— あにもに (@animmony) 2024年11月29日
Blu-ray版では、テレビ版の修正に加え、さらに細部まで手が加えられています。オフ&モンスターシーズンのパッケージリリースも終盤に差し掛かって、そのリテイク数も1話あたり300カットにまで及んでいます。
比較画像の左側がABEMA版、右側がBlu-ray版です。
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